米国の歯科業界では、歯科衛生士の不足により苦境に立たされているという声が上がっている。

去る4月、米国歯科医師会は傘下の保健政策研究所の報告書を通じて、歯科衛生士の不足問題を取り上げた。同研究所によると、米国の歯科医師のうち、適切な数の歯科衛生士と働いているのはわずか60%にとどまることが明らかになった。
歯科助手は73.5%、事務職員は79.3%など、これらよりは状況がましだが、歯科衛生士の不足は深刻な状況にある。最近歯科衛生士の採用を行った歯科医師の91%は、歯科衛生士の確保が非常に困難(very or extremely challenging)であると回答した。
報告書は、米国の歯科衛生士養成プログラムにおける1年次の登録率が、2025年時点で2020年より16%増加したと指摘した。歯科衛生学科の卒業生数も2022年以降、増加傾向にある。
しかし、退職する歯科衛生士の数は把握できていない。さらに、米国内の歯科医院の従業員数がこの1年半の間、横ばい状態にあることを考慮すると、現役の歯科衛生士が増えたとは考えにくい。
高騰する米国の物価に比べ、歯科衛生士の年収が上がらないことも問題点として指摘されている。報告書は、インフレを考慮すると、歯科衛生士など米国内の歯科医院の従業員の平均賃金は、数年前と比べて実質的には低下していると分析した。
しかし、一般の病院職員の賃金は小幅に上昇し、米国全体の民間部門の労働者の平均賃金は着実に増加したという。米国でも、所得水準の高いカリフォルニア州でさえ歯科衛生士の不足が深刻化しており、賃金期待値に影響を与える生活費の上昇や高い需要などが要因として挙げられている。
歯科衛生士の不足により、患者の待ち時間が長くなり、郊外の個人医院の存続が脅かされているという指摘も出ている。 昨年11月、米東部ウェストバージニア州のABC22ニュースによると、東部のバーモント州では歯科衛生士が不足しているため、患者が定期検診を受けるために1年以上待たされるケースもあるという。
このため、一部の地域では、クリーニング(スケーリング)を受けられない患者も出てきている。ある歯科医師によると、スケーリングを受けたいという患者に「1年待たなければならない」と伝えたところ、怒鳴りつけられたケースもあったという。
また、これにより歯科医院には人的・財政的な負担も生じている。このため、個人開業の歯科医師が大手歯科グループに医院を売却するケースも出ていると、放送は伝えた。
しかし、反論もある。バージニア州歯科衛生士協会のデレク・スバーン会長は 「バージニア州には歯科衛生士が不足しているのではなく、(年収など)現在の勤務環境下で働こうとする歯科衛生士が不足しているのだ」とし、「有害な勤務環境、職場いじめ、キャリア開発の機会の不足などが原因で、歯科衛生士が離職している」と強調したと、現地のWWBT7放送が報じた。

歯科衛生士の職務満足度を調査した研究論文もある。昨年9月、BMC Health Services Research誌に掲載された、米国東部フィラデルフィアのレイク・エリー整骨医科大学所属のリンダ・A・ストラウブ=ブルース(Linda A. Straub-Bruce)による研究によると、328人の回答者のうち、女性(98.5%)、55歳以上(52.7%)、個人歯科医院勤務(71.6%)の割合が高かった。 彼女たちは、仕事への誇りや同僚との関係などでは満足度が高かったものの、収入や昇進の機会、組織からの支援については不満を抱いていると明らかにした。
歯科衛生士の不足を解消するため、米国の各地域ではそれぞれ独自の政策を打ち出している。カリフォルニア・バプテスト大学では、24ヶ月で修了できる歯科衛生学専攻の理学士(Bachelor of Science in Dental Hygiene program)プログラムが推進されている。
カリフォルニア州歯科医師会によると、歯科衛生委員会はこのプログラムを暫定的に承認した。同校は2028年9月までの開講を目指し、毎年96人の歯科衛生士を輩出する計画だ。 短期集中プログラムを通じて、リバーサイド、オンタリオ、サンダーナディノなど南カリフォルニア地域の患者や社会的弱者層に口腔保健サービスを提供することを目標としている。
米国北西部のコロラド州フォートコリンズでは、歯科衛生学科が学生によるスケーリングサービスを実施している。現地の9ニュースによると、フロントレンジ・コミュニティ・カレッジの歯科衛生学プログラムでは、教授の監督の下、学生たちがスケーリングを行っている。
今年5月時点で、150人がスケーリングなどの治療を受けた。一部の患者は、スケーリングを受けてから5年が経ったと喜びの声を上げた。しかし、学生による診療であるため、料金は一般の歯科医院より安い反面、1回の通院に3時間から3時間半かかる。 米国の一般歯科で受けるスケーリングは、保険に加入していない場合、約200ドル(約30万ウォン)程度だ。
Writer. イ・ヒョンテク
<中央日報>と<朝鮮日報>で18年間勤務した元新聞記者。 現在はフリーランスの寄稿者として活動し、人生第2幕を構想している。 マスコミのほか、JTBC放送広報マーケティングチームと米国エデルマン・グローバル・アドバイザーリーで勤務した経歴がある。



